自治体連携

自治体営業や官民連携を進めるうえで、最初に押さえたいのが「自社の提案する事業を、どの部署が担当しているか」です。
地方自治体は、子育て、福祉、防災、教育、産業振興など、幅広い行政サービスを担っています。それぞれの部署で扱う課題や予算、業務の進め方が異なるため、提案内容に合った相談先を見つけることが、具体的な検討への第一歩になります。
そこで重要になるのが、個々の事業や業務を所管する「原課」との対話です。原課の役割を理解し、公開資料から課題や検討状況を把握すれば、面談で確認すべきことも明確になります。
この記事では、地方自治体の組織の基本から、原課に当たる重要性、担当部署の探し方、LobbyAIを活用した提案準備まで解説します。
地方自治体には、知事や市区町村長の指揮監督の下で行政を担う首長部局があります。保健福祉、都市整備、税務、産業振興などの分野ごとに、部・局・課・室・係といった組織が置かれています。
ただし、その名称や構成は自治体によって異なります。大規模な自治体では業務が細かく分かれ、町村では一つの課が複数の分野を担当することもあります。
例えば「総務課」という名称でも、人事、財政、契約、防災など、受け持つ仕事は一様ではありません。組織図を見る際は、部署の位置に加えて、「どの仕事を担当し、何を判断する部署なのか」を確認することが大切です。
その手掛かりになるのが「事務分掌」です。事務分掌には、各部署が担当する仕事が示されています。さらに、決裁の経路を確認する際は、事務決裁規程なども参照します。
また、教育分野では教育委員会の役割も重要です。教育委員会は首長から独立した行政委員会として、教育行政の重要事項や基本方針を決定します。学校向けサービスを提案する場合には、教育委員会事務局の担当部署に加え、予算や契約に関わる役割分担も確認する必要があります。
原課とは、通常、個々の事業や業務を直接担当する部署を指す言葉です。正式な部署名ではなく、財政部門などとの関係で、事業を所管する部署を表す際に使われます。
例えば、高齢者の介護予防なら高齢福祉・介護担当、子育て相談なら子育て支援担当、道路の維持管理なら道路担当が候補になります。実際の所管は、自治体ごとの事務分掌で確認します。
原課には、住民からの相談、日常業務の負担、既存の取組の課題など、事業を考えるための情報が集まっています。
同じ「相談業務の効率化」でも、受付件数の増加が問題なのか、相談員の確保が難しいのか、対応記録の作成に時間がかかっているのかで、必要な解決策は変わります。
原課との対話によって、サービスの機能を、実際の業務や住民の困りごとに結び付けられます。
新しい事業の検討では、目的、対象者、実施方法、費用、期待する成果などを整理する必要があります。原課は、こうした事業の中身を具体化し、庁内で説明する重要な役割を担います。
企業側にも、原課が検討に使える情報を提供する視点が求められます。例えば、次のような内容です。
どの住民・業務を対象にするのか
現在の方法と比べて何が改善するのか
導入費用と継続費用はいくらか
職員にどのような作業が発生するのか
成果を何で測るのか
財政部門は、こうした事業の必要性に加え、全庁の優先順位や財源、継続可能性を確認します。原課が事業の価値を説明できる材料をそろえることが、提案準備の一つの目的になります。
サービスの導入には、職員の配置、既存システムとの関係、住民への周知、問い合わせ対応などが伴います。
原課と早い段階から話すことで、導入に必要な条件や関係部署を把握し、実行できる事業案へ近づけられます。運用まで具体化した提案は、担当者が庁内で説明する際にも役立ちます。
自治体の事業には、複数の部署が関わります。相談を進める際は、次のように機能ごとの役割を整理すると分かりやすくなります。
部署・機能 | 主な役割 | 提案時に確認したいこと |
|---|---|---|
原課・事業所管課 | 課題把握、事業案の検討、業務要件の整理、実施 | 対象業務、優先課題、導入条件 |
企画・政策部門 | 総合計画、重要施策、部局間の調整 | 自治体の方針との関係、横断的な調整 |
財政部門 | 予算編成、査定、財源調整 | 費用の根拠、優先順位、継続負担 |
人事部門 | 職員配置、採用、研修 | 運用に必要な人員や研修 |
情報政策・DX部門 | 情報システム、全庁基盤、技術面の調整 | 既存環境、セキュリティ、連携条件 |
契約部門 | 入札・契約の方法や手続 | 調達方法、参加資格、契約条件 |
※役割の配置や担当範囲は自治体・案件によって異なります。
例えば、子育て相談のオンライン化では、子育て担当が業務を検討し、情報政策・DX担当がシステム面を確認する、といった分担が考えられます。
また、担当者や課長が判断できる範囲は、案件の内容や金額、決裁規程によって変わります。面談では「誰が実務を担当するか」「どの部署との協議が必要か」「どの段階で組織として判断するか」を確認すると、次の行動を整理できます。
まず、自社のサービスが解決する課題を整理します。
例えば、AIを使った相談支援サービスであれば、「子育て相談」「相談体制の充実」「相談員の負担」「相談記録の作成」などが検索語の候補になります。
行政資料で使われる言葉に置き換えることで、関連する部署や事業を探しやすくなります。
自治体の公式サイトで「組織一覧」「組織図」「主な業務」「事務分掌」を確認します。
例えば、横須賀市の組織一覧には「デジタル・ガバメント推進室」が掲載されています。DXに関する相談先を調べる際も、このような組織情報を入口に、具体的な担当業務を確認します。
組織改編で部署名が変わる場合もあるため、現在の公式ページを参照することが大切です。
相談先の候補が見つかったら、公開資料を使って、その部署がどのような課題や事業に関わっているかを確認します。
資料 | 確認するポイント |
|---|---|
議会議事録 | 議員が何を質問し、行政側がどう答弁したか |
総合計画・分野別計画 | 課題、目標、施策、事業の位置付け |
予算説明資料 | 対象年度、事業内容、計上された経費 |
公募・調達資料 | 募集内容、担当部署、条件、日程 |
ここでは、議員の提案、行政側の検討方針、予算の計上、調達の開始を区別して読みます。
「議会で話題になっている」という情報からは、関心の所在を把握できます。予算や発注予定については、それぞれの資料で確認していきます。
最後に、部署の公開窓口へ、提案したいテーマを簡潔に伝えます。
例えば「子育て相談の記録作成や対応状況の共有を支援するサービスについて、担当部署へ情報提供したい」と伝えれば、相談の目的が明確になります。
面談では、現在の課題、関係課、事業検討の時期、必要な資料を確認します。公開情報で把握した内容と、面談で確認できた内容を記録しておくと、その後の提案にもつながります。
担当部署を探す際には、組織図に加えて、議会議事録、計画、予算などを読み合わせる必要があります。「LobbyAI」は、自治体ごとに分散する公共情報の検索・分析を支援するサービスです。
原課へのアプローチでは、これらを次のように活用できます。
自社が支援できる課題を検索し、そのテーマに関連する議論や計画がある自治体を探します。
検索結果を得た後は、本文を確認し、課題の対象、現在の取組、残されている問題を整理します。これによって、自治体ごとに相談する理由を具体化できます。
議事録の答弁者や、計画・事業資料に記載された所管部署は、相談先を探す手掛かりになります。
その情報を現在の組織図や事務分掌と照合すれば、原課の候補と関係部署を整理できます。また、資料の日付や記載内容から、課題の把握、検討、実証、予算化など、どの段階にあるかを確認します。
調査した内容は、面談の質問へつなげることで活用できます。
例えば、相談体制の充実を掲げる計画を確認した場合には、次のような質問が考えられます。
現在、受付から対応完了までのどの工程に負担がありますか
既存の取組で対応できている点と、追加対応が必要な点は何ですか
新たな取組を検討する際、どの部署との調整が必要ですか
次年度の事業検討に向けて、いつまでにどの資料が必要ですか
資料名、日付、該当箇所、出典リンクを添えて準備すると、質問の背景を説明しやすくなります。公開資料で確認できた事実と、自社の提案仮説を分けて整理することも大切です。
事業を担当する部署を指す場面では重なります。「担当課」は問い合わせ内容などに応じた担当部署を表し、「原課」は財政・契約部門などとの関係で、事業を直接所管する部署を指す際によく使われます。
まずは、対象業務を受け持つ実務担当者を確認します。担当者と課題や実施条件を整理し、組織として判断する論点が具体化した段階で、管理職の同席を相談すると進めやすくなります。
サービスを利用する原課と、システムや全庁基盤を担当する部署の役割を確認します。業務上の必要性と技術的な条件を、それぞれの担当と具体化することが重要です。
自治体への提案を準備する際は、自社が支援できる行政課題を起点に、関連資料、原課の候補、面談で確認したい点をそろえてみてください。公共情報を使った提案先の調査や面談準備については、LobbyAIのサービス詳細をご覧ください。
髙橋京太郎
LobbyAI株式会社 代表取締役CEO
日本大学法学部卒業、法政大学大学院修了。衆議院議員秘書、さいたま市議会政務活動員として、国政・地方行政の現場で政策形成や渉外業務に従事。大学在学中から国政政党の学生組織の設立・運営に携わり、超党派団体での活動を通じて若年層の政治意識向上にも取り組む。一方で、WEBサービスの開発・運営にも携わり、マッチングアプリのコンテンツディレクターなどを務めるなど、テクノロジー分野での実務経験も積む。アジアを代表する30歳未満の先進的な起業家・リーダーを選出する「Forbes 30 Under 30 Asia 2026」に選出。東京都・TIBのスターティングメンバーにも参画。
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