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2025/11/19 16:16

自治体への提案・営業を成功に導く4つの戦略と指標:制度・課題・予算・人物起点の徹底解説

自治体提案・自治体営業活動におけるポイント

自治体への働きかけ、すなわち「自治体提案活動」は、単なる製品やサービスを売り込む営業活動とは一線を画します。それは、特定の政策や制度、行政のあり方に影響を与え、社会的・制度的な「変化」を意図する高度な活動です。民間企業が地域社会の課題解決に貢献し、新たな市場を創造するためには、このロビイングという視点が不可欠となります。

しかし、全国に1,700以上存在する自治体は、規模も財政状況も抱える課題も千差万別です。画一的なアプローチでは、担当者の関心を引き、予算化を経て実行に至るまでの高いハードルを越えることはできません。成功の鍵は、状況に応じて最適な戦略を選択し、柔軟に使い分けることにあります。

今回は、自治体への提案活動における主要な4つの戦略類型「制度起点型」「課題起点型」「予算起点型」「人物起点型」を、具体的なケーススタディを交えながら徹底的に比較・分析します。これらの戦略を深く理解することで、民間企業は単なる受注者から、地域課題を共に解決する真のパートナーへと飛躍するための実践的な知見を解説します!

1. 制度起点型アプローチ:国の動きを追い風にする

「制度起点型」アプローチは、国の法改正や新制度の設立といったマクロな変化を捉え、それを追い風として自治体に具体的な実行プランを提案する、時流を読んだ極めて強力な手法です。国が大きな方針を示した直後は、自治体も対応を模索している段階にあり、的確な提案はまさに「渡りに船」となります。

このアプローチの核となるロジックは、国の制度変更が自治体にとっての「行動すべき理由」を創出する点にあります。法改正、ガイドラインの改定、新たな補助制度の設立などは、自治体に関連業務の発生や対応の必要性を生み出します。例えば、「こども誰でも通園制度」の創設や「GIGAスクール構想 第2期」の開始といった国の動きは、それ自体が民間企業にとって具体的な事業提案の機会となるのです。

【ケーススタディ:副業人材活用事業】

ある副業マッチングサービス企業は、この制度起点型アプローチを巧みに活用し、人口15万人の市で中小企業支援事業の採択に成功しました。そのプロセスは以下の通りです。

課題発見: まず、市議会で中小企業支援に関する議論が行われていることを発見。並行して商工会議所との対話を通じて地域の人材不足という課題を深く理解する中で、国が「地域活性化起業人制度」を改正したという制度的トリガーを絶好の機会として捉えました。

関係構築: 次に、市の商工課との定期的な面談を開始し、商工会議所での講演機会を得ることで、地域のキーパーソンとの信頼関係を構築。さらに議員向け勉強会で副業活用の可能性を説明し、政策的な理解を深めました。

提案・予算化: 国の制度改正を背景に、副業人材を活用した具体的な事業設計と予算案を提示。他自治体での導入事例も添えることで説得力を高め、議会でのさらなる議論を後押ししました。その結果、市の産業振興課は予算要求を行い、実証事業として採択されました。

実証・展開: 3ヶ月間の実証事業で10社の中小企業と20名の副業人材のマッチングに成功し、具体的な成果を提示。これが評価され、翌年度の本格事業化へと繋がりました。

この事例の成功要因は、「①国の制度改正という絶好のタイミング」「②商工会議所という地域の既存ネットワークとの連携」「③議会を通じた政策議論の活性化」という3点です。国の制度改正が斬新な提案の「追い風」となり、地域の既存ネットワークが現場レベルでの「信頼性」を担保し、議会という公的な場がその両者を結びつけ政策へと昇華させたのです。

制度起点型アプローチは、自治体にとって取り組むべきテーマやメリットが明確であり、国という強力な後ろ盾があるため、前例のない取り組みであっても導入のハードルを大きく下げることができます。しかし、すべての課題が国の制度変更と連動するわけではありません。次に、自治体固有の「困りごと」に直接アプローチする手法を見ていきましょう。

2. 課題起点型アプローチ:自治体の「困りごと」に寄り添う

「課題起点型」アプローチは、自治体が直面している固有の課題や「困りごと」に対して、直接的な解決策を提示する、最も基本的かつ共感を獲得しやすい手法です。自治体職員や議員が日々頭を悩ませている問題に寄り添い、具体的な解決策を示すことで、提案は「売り込み」から「協働の申し出」へと昇華します。

このアプローチの要点は、課題の存在を客観的な根拠に基づいて示すことです。例えば、議会の議事録で特定の議員が繰り返し質問しているテーマや、市民アンケートで不満の声が多く上がっている項目などを引用することで、提案の説得力は飛躍的に高まります。自治体が直面する主要な課題領域には、以下のようなものが挙げられます。

人手不足: 保育、介護、観光、飲食といった現場の担い手不足

若者流出: 定住促進や新たな働き方の創出

行政DX: 職員の業務効率化、専門人材の確保

災害対応: 避難所運営の高度化や情報伝達手段の確保

高齢化対応: 高齢者の移動手段の確保や見守りサービスの構築

【ケーススタディ:行政手続きオンライン化】

ある行政システム開発企業は、人口8万人の市において、この課題起点型アプローチを用いて行政手続きのオンライン化を段階的に推進しました。

課題の抽出: まず、職員へのヒアリングを通じて既存の業務フローを詳細に分析し、非効率な点を洗い出しました。同時に、市民アンケートを実施してオンライン化へのニーズを把握。これらの客観的データに基づき、「窓口業務の負担増」と「市民の利便性低下」という二つの課題を明確にしました。

段階的導入: 最初から大規模なシステム導入を提案するのではなく、まずは住民票交付申請など、一部の手続きに絞ったパイロット事業を提案。小さく始めることで、リスクを抑えつつ効果を測定しました。

効果の可視化と拡大: パイロット事業を通じて、職員の業務負荷削減効果や市民の利便性向上効果を具体的な数値で証明。その成果を根拠に、対象となる手続きを段階的に拡大していきました。

この事例における成功要因は、「①小さく始めて段階的に拡大するアプローチ」「②職員の業務改善効果を重視した設計」「③市民の利便性向上を数値で証明したこと」の3点です。この段階的アプローチがプロジェクトのリスクを低減し、職員と市民双方のメリットを可視化したことで、内部・外部両方からの広範な支持を築き、着実な拡大への推進力を確保したのです。

課題起点型アプローチは、自治体職員や議員の当事者意識を醸成しやすく、強い推進力を生む可能性があります。一方で、どれだけ課題が明確であっても、それを解決するための財源がなければ事業は動き出しません。次に、その「お金」の側面から提案を組み立てるアプローチを見ていきます。

3. 予算起点型アプローチ:財源から逆算する

「予算起点型」アプローチは、提案内容を先に考えるのではなく、自治体が活用可能な既存の予算や国の補助金・交付金といった財源から逆算して事業を組み立てる、極めて実践的で実現可能性の高い手法です。自治体職員にとって、財源の裏付けがある提案は、庁内での予算要求プロセスを進める上で非常に心強いものとなります。

このアプローチの核心は、自社のソリューションがどの補助金や交付金の対象となるかを徹底的にリサーチし、最適な組み合わせを提示することにあります。提案書に、具体的な制度名、対象事業、補助率などを明記した「財源マッチング表」を盛り込むだけで、提案の信頼性は劇的に向上し、担当者は「これなら予算化できるかもしれない」と前向きに検討しやすくなります。

【ケーススタディ:避難所向け再エネ・蓄電池導入】

あるエネルギー関連企業は、人口3万人の町で、防災と環境という二つの課題を解決する事業を、この予算起点型アプローチで見事に実現しました。

財源の特定: この企業は、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策予算」が拡充されていることに着目。これが、提案する再エネ・蓄電池システムの導入に活用できる強力な財源になると判断しました。

統合的な提案: この事業は、災害時の電源確保(防災課)と平時の省エネ・脱炭素化(環境課)という、複数の部署にまたがる課題を同時に解決するものでした。企業は、関連部署それぞれにメリットを提示すると同時に、国の補助金を複数組み合わせた具体的な財源確保案を提示。これにより、部署間の連携を促し、全庁的なプロジェクトとして推進する土台を築きました。

予算確保と実装: 財源の裏付けが明確であったため、提案はスムーズに予算化され、町の避難所へのシステム導入が実現しました。

この成功の鍵は、防災や環境といった複数の部署が関わる複合的な課題に対し、国の特定の予算をテコにして、複数の補助金を組み合わせた統合的な財源確保案を提示した点にあります。これにより、各部署が個別に予算を捻出する困難を乗り越え、全庁的な合意形成を円滑に進めることができました。

予算起点型アプローチは、担当職員が庁内で予算要求しやすい「お膳立て」をする、極めて効果的な手法です。しかし、時には制度や予算といった枠組みだけでは動かせない、大きな決断が必要な場面もあります。そうした状況で力を発揮するのが、次の「人物起点型」アプローチです。

4. 人物起点型アプローチ:キーパーソンの「思い」を動かす

「人物起点型」アプローチは、制度、課題、予算といった客観的な要素に加え、首長や有力議員といったキーパーソンの個人的な関心事、政策的信条、掲げるビジョンといった「思い」に焦点を当てる、高度に個別最適化された手法です。政策は最終的に「人」が決定するため、キーパーソンの心を動かすことができれば、物事は一気に進展する可能性があります。

この戦略の要は、徹底したリサーチにあります。キーパーソンのSNSでの発信、議会での過去の発言録、就任時の施政方針演説などを丹念に読み解き、その人物がどのような社会課題に関心を持ち、どのような将来像を描いているのかを深く理解します。その上で、自社の提案が、いかにそのビジョンの実現に貢献できるかをストーリーとして描き出します。

このアプローチが特に有効なのは、トップダウンでの迅速な意思決定が期待できる状況や、特定のテーマ(例:子育て支援、デジタル化など)に対してキーパーソンが強いリーダーシップを発揮している場合です。

このアプローチを成功させるための戦略の要点は、以下の通りです。

リサーチの徹底: キーパーソンの過去の発言、政策テーマ、経歴などを徹底的に分析し、価値観や優先順位を深く理解する。

ビジョンの共有: 提案内容を単なる機能説明に留めず、それがキーパーソンの掲げるビジョンや政策目標の実現にどう直結するのかを、情熱を持ってストーリー立てて説明する。

個別カスタマイズ: 汎用的な提案資料ではなく、「あなた(キーパーソン)のビジョンを実現するために、我々が特別に考えた提案です」という「一点もの」であることを強調し、特別感を演出する。

人物起点型アプローチは、成功すれば他のアプローチでは考えられないほどのスピードで事業を前進させる絶大な力を秘めています。しかしその一方で、キーパーソンの異動や選挙での落選といった人的要因に結果が左右されるというリスクも伴います。だからこそ、他のアプローチと組み合わせ、多角的な視点を持つことが重要になるのです。

5. 4つのアプローチの戦略的比較

これまで見てきた4つの提案類型は、それぞれ異なる強みと特性を持っています。状況に応じて最適な戦略を選択するため、ここで各アプローチを横断的に比較し、その違いを明確にしておきましょう。

比較項目

制度起点型

課題起点型

予算起点型

人物起点型

主なトリガー

国の法改正、新制度、補助金

自治体固有の課題、市民の声

既存の予算、交付金

キーパーソンの関心、ビジョン

主なアプローチ対象

政策担当課、関連部署

課題を所管する現場部署

財政課、企画課、担当課

首長、議員、部長級

提案の説得力

国の後ろ盾、制度的必然性

課題解決の具体性、緊急性

財源の確実性、実行可能性

キーパーソンの共感、トップダウン

求められる準備

制度の正確な理解、国の動向把握

地域の課題分析、データ収集

補助金・予算情報の詳細な調査

人物リサーチ、個別提案の設計

期間

中期~長期

短期~中期

短期~中期

短期~長期

この比較表から明らかなように、各アプローチは排他的なものではありません。むしろ、それぞれが異なる状況やフェーズで有効な戦略的選択肢となります。あるアプローチで行き詰まった際に別の視点に切り替える、あるいは複数のアプローチを組み合わせることで、提案の成功確率は格段に高まります。

6. 最適なアプローチの選択と組み合わせ

実際のロビイング活動において最も重要なのは、単一のアプローチに固執せず、状況に応じて複数の類型を戦略的に組み合わせることです。優れた提案は、多くの場合、これらの要素が複合的に絡み合っています。

先に紹介したエネルギー業界の「避難所向け再エネ・蓄電池導入事業」は、まさに複数のアプローチを巧みに組み合わせた成功例です。この案件がなぜ成功したのかを、複合的なアプローチの観点から再分析してみましょう。

「制度起点」: 国の「ゼロカーボンシティ宣言」推進という大きな政策トレンドを捉え、提案に時代的な正当性を与えました。

「課題起点」: 災害時の電源確保という、住民の安全に直結する喫緊の地域課題に応えるものであり、提案に切実な必要性をもたらしました。

「予算起点」: 国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策予算」という具体的な財源を活用することで、提案に確実な実現可能性を付与しました。

このように、国の制度トレンド(追い風)、地域の課題(必要性)、そして国の予算(実現性)という3つの要素を一本のストーリーに編み上げたからこそ、複数の部署を巻き込む複雑な案件を成功に導くことができたのです。

では、どのような状況でどのアプローチを選択、あるいは組み合わせるべきでしょうか。以下にその指針を示します。

国の大きな政策変更があった時: 「制度起点型」を主軸に据え、自治体にとっての具体的な実行プランを提示する。

議会で特定の課題が頻繁に議論されている時: 「課題起点型」で、データに基づいた具体的な解決策を迅速に提示する。

年度末や予算編成期が近い時: 「予算起点型」で、活用可能な財源を明示した即時性のある提案を行い、予算要求を後押しする。

新任の首長や議員が強いリーダーシップを発揮している時: 「人物起点型」で、そのビジョンに合致した先進的な提案を直接行い、トップダウンでの決断を促す。

最も重要なのは、これら4つの視点を常に持ち、自治体の内部状況、政治的なタイミング、社会の動向に応じて、戦略の重心を柔軟に切り替え、あるいは融合させる複眼的な思考です。

まとめ:戦略的アプローチで官民連携を加速する

今回、解説した「制度起点」「課題起点」「予算起点」「人物起点」という4つのアプローチは、複雑で多岐にわたる自治体への提案活動において、確かな指針を示す羅針盤となります。

真に成功するロビイングとは、自社のソリューションの優位性を一方的に売り込むことではありません。それは、対象となる自治体が置かれた制度的、財政的、人的な文脈を深く理解し、その時々の状況に最も適した形で価値を提供することから生まれます。

課題に寄り添い、財源を示し、国の動きを追い風にし、キーパーソンの思いを動かす。これらの戦略的視点を駆使することで、提案は単なる「営業」から「政策提言」へと進化します。

この4つの戦略類型を理解し、実践することで、民間企業は単なる下請けや受注者ではなく、地域課題を共に考え、解決策を共に創り出す自治体の真のパートナーとなることができるでしょう。それこそが、持続可能な社会の実現に向けた、これからの時代の官民連携のあり方なのです。

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