自治体営業は選挙前後でどう動く?首長と議員への政策提案と官民連携

自治体連携

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2026/10/25

自治体営業で「提案内容には関心を持ってもらえたのに、事業が動かない」と感じたとき、確認したいのが選挙と予算のタイミングです。首長や議会の改選は、地域課題の優先順位や政策を進める体制が見直される機会になります。

ただし、選挙公約への掲載、予算化、事業者の選定は別の段階です。企業に必要なのは、政策への関心を捉え、行政が検討できる事業案へ落とし込むこと。本記事では、地方選挙の前後における自治体営業・官民連携の進め方と、首長・議員への政策提案の考え方を解説します。

地方選挙が自治体営業に影響する理由

首長選挙と議会議員選挙で見るポイントは異なる

自治体には、知事・市区町村長を選ぶ首長選挙と、地方議会議員を選ぶ選挙があります。両者の役割を分けると、選挙後に確認すべき情報も明確になります。

選挙

選挙後に確認する変化

企業が準備すること

首長選挙

公約の具体化、施政方針、重点事業、組織体制

新たな方針と既存計画を結び付けた事業案

議会議員選挙

会派構成、委員会の所属、質問・審議の論点

住民への効果、費用、代替案を説明する資料

首長の政策的な関心が高まっても、担当部署の検討や予算、必要な議会手続、調達手続がなくなるわけではありません。議員との対話も、政策課題を共有する機会として位置付け、個別契約の決定とは区別します。

また、すべての自治体が統一地方選挙で改選されるわけではありません。対象自治体ごとに首長と議会の実際の選挙日程を確認しましょう。

選挙日と予算要求の締切を重ねて考える

提案時期を考える際は、投票日だけでなく、予算要求、計画改定、公募・契約更新の予定も確認します。

例えば、選挙後に新しい政策が示されても、翌年度の予算要求がすでに進んでいれば、提案の検討時間は限られます。一方、選挙前から地域課題や概算費用を整理しておけば、方針が具体化した段階で検討材料を提供しやすくなります。

担当部署には「いつ導入できますか」だけでなく、「次の予算検討に向け、いつまでにどの資料が必要ですか」と確認すると、営業活動の予定を立てやすくなります。

選挙前後の自治体営業はいつ何をするか

以下は営業計画を組むための目安です。各期間は制度上の期限ではなく、実際の選挙日程と予算編成に合わせて調整します。

時期の目安

主な目的

具体的な行動

選挙の半年前から

地域課題と既存施策の把握

計画・議事録・事業評価を読み、担当部署に課題を確認

公約の検討が進む時期

政策の選択肢の提供

課題の根拠、住民への効果、概算費用を整理して政策対話

告示前後から投票日まで

公開情報の把握と実務の継続

公約を確認し、既存案件は担当部署と必要な調整を継続

選挙後の最初の議会まで

新方針と体制の確認

所信・施政方針、担当部署、補正予算の予定を確認

事業検討・予算要求の時期

実施条件の具体化

対象、費用、運用負担、評価方法、調達予定を整理

公募・選定段階

公表条件に沿った提案

参加資格と評価項目を確認し、正式な質問・応募手続へ

選挙前は地域課題を政策提案に変える

選挙前の情報収集では、製品名やサービス分類だけで検索するより、自治体が使う課題の言葉を探すことが有効です。

健康サービスなら「健康寿命」「健診受診率」「食育」、業務支援サービスなら「窓口の待ち時間」「職員の事務負担」「申請手続の簡素化」といった言葉が入口になります。総合計画、分野別計画、議会での質問と行政答弁、事業評価を照合し、既存施策で解決しきれていない部分を探します。

候補者や現職議員との政策対話では、地域課題を示すデータ、他自治体の事例、実施条件を提供します。自社に都合のよい情報だけでなく、費用や限界、別の手段も説明できる資料が、政策としての検討を助けます。

選挙期間中は行政実務と選挙活動を分ける

選挙があるからといって、自治体の業務や契約手続が一律に停止するわけではありません。既存案件の期限や担当者の対応可能な日程を確認し、必要な実務を進めます。

一方、首長としての公務と候補者としての活動は区別が必要です。行政向けに提供した資料を候補者が選挙広報へ転用する場合などは、利用目的や公開範囲を改めて確認します。政策面談を行った事実を、自治体による導入決定や推薦として営業資料に掲載することも避けましょう。

選挙後は公約がどう事業化されるかを追う

当選直後の挨拶だけでなく、最初の議会で示される方針、重点施策、担当部署、予算資料まで追うことが大切です。

例えば「高齢者の健康づくりを進める」という公約があっても、対象者、実施場所、担当課、財源、成果指標は決まっていないかもしれません。企業は、こうした未確定の条件を担当部署と確認し、検討に必要な情報を補います。

現職が再選した場合も、従来の事業が同じ内容で継続すると決めつけないこと。新たな公約や事業評価を見て、拡充・改善・見直しの方向を確認します。首長が交代した場合も、既存契約の扱いと今後の政策判断を分けて把握します。

骨格予算と肉付け予算を自治体営業にどう生かすか

首長選挙と予算編成の時期が重なる場合、政策的な新規事業を抑えた「骨格予算」を編成し、選挙後の補正予算で政策的経費を追加することがあります。この追加は「肉付け予算」と呼ばれます。

朝霞市の令和7年度予算では、市長選挙が予算編成期に実施されたことを踏まえ、一般会計を骨格予算として編成し、新規・拡充事業の経費は主に6月補正で追加する方針が示されました。年度当初から必要な事業には例外も設けられています。

出典:朝霞市「令和7年度 予算編成の概要」

このような自治体では、当初予算に提案分野の新規事業がないことだけで、検討余地がないと判断しないことが重要です。予算編成方針を読み、補正予算で検討する予定があるか、資料提出の時期はいつかを確認します。

ただし、選挙があれば必ず骨格予算になるわけでも、肉付け予算が必ず6月に組まれるわけでもありません。補正予算案の公表時点では庁内検討が進んでいることもあるため、公表後の確認と、検討段階での情報提供を分けて計画しましょう。

首長や議員への政治的アプローチをどう進めるか

政策課題に応じて対話する相手を選ぶ

政治的アプローチとは、地域課題の解決に向け、首長や議員に現場の情報や政策の選択肢を届ける活動です。誰に相談するかは、求める判断によって変わります。

相手

対話する主な内容

首長・政策企画部門

自治体全体の重点課題、部署横断の取組、政策上の位置付け

事業の担当部署

現場の課題、実施方法、職員の負担、費用、評価指標

議員・会派

住民ニーズ、政策の必要性、公費負担の妥当性

財政・契約部門

予算や調達の制度・手続上の条件。担当部署と調整して確認

議員を探す際は、役職だけでなく、公開された議事録の質問、所属委員会、継続的に扱う政策テーマを確認します。関心を持つ相手に、根拠のある課題と複数の解決方法を説明することが、建設的な政策対話につながります。

公約への提案は公共的な目的と実施条件を示す

公約への反映を目指す場合も、自社製品の導入を前提にするより、自治体が実現すべき状態を明確にします。

例えば、架空の窓口支援サービスなら「当社の予約システムを導入する」ではなく、「来庁前予約や手続案内を整備し、窓口の待ち時間を短縮する」という政策目標を示します。その上で、現在の待ち時間、対象手続、デジタル利用が難しい住民への対応、必要経費、効果の測定方法を説明します。

政策目標への合意と、どの事業者が実施するかの選定は別です。公約に関連する施策が盛り込まれた場合も、自社への発注が確約されたとは扱いません。

担当部署の検討と議会への説明をつなぐ

首長や議員との面談後は、担当部署が検討できる形で資料を整えます。紹介があった場合も、何を説明したか、何が未決定かを共有し、通常の手続に沿って協議を進めます。

議会で課題が取り上げられた場合は、質問だけでなく行政側の答弁も読みます。「調査する」「実証を検討する」「既存制度で対応する」では、次に必要な提案が異なるためです。議員への説明を、特定企業の採用を担当職員に迫る手段にしないことが、継続的な信頼を支えます。

官民連携を実証から継続事業につなげる

選挙後の新しい方針と自社の強みが合致しても、連携協定や実証の実施だけで事業化が完了するわけではありません。実証を提案する時点で、次の段階に進む条件を整理します。

  • どの地域課題を、どの対象者について検証するか

  • 自治体、企業、地域の団体がそれぞれ何を担うか

  • 費用、職員の作業、データ管理を誰が負担するか

  • 何を成果として測定し、いつ評価するか

  • 継続判断をいつ行い、翌年度予算の検討に間に合うか

無償実証でも、自治体の作業や将来の維持費は発生し得ます。無償であることを理由に、その後の随意契約や本導入が当然に認められるわけではありません。継続時の調達方法や公募の可能性は、実証の段階から確認します。

政策提案と選挙支援で混同しやすい注意点

政策提案と選挙支援は、目的、費用、参加者、情報の利用を分けて管理します。候補者の応援や寄附を、受注・許認可などの便宜と交換条件にしてはいけません。

選挙運動は、原則として公示・告示日に立候補の届出が受理されてから投票日前日までです。「政策勉強会」という名称でも、実態が特定の選挙で候補者の当選を目的とした投票獲得の働きかけなら、名称だけで規制を免れるものではありません。

また、午前8時から午後8時という制限は街頭演説等に関するもので、選挙運動すべてに共通する時間制限ではありません。選挙支援を頼まれた場合は、具体的な行為について選挙管理委員会の案内等を確認します。

参考:横浜市「選挙に関するよくある質問」

企業の政治活動に関する寄附は、原則として政党・政治資金団体が対象となり、個人の寄附とは条件が異なります。会社負担の人員派遣や物品・サービスの無償提供も、単に「お手伝い」と呼ぶだけで判断せず、寄附等への該当性を確認する必要があります。資金や労務の提供を伴う場合は、実施前に法務・専門家と整理しましょう。

参考:政治資金規正法、実務ナレッジ「政治資金と職業倫理を、政策活動から分けて管理する」

自治体営業で管理したい情報

選挙情報を営業活動に生かすには、自治体ごとに次の項目を同じ管理表へまとめると便利です。

管理項目

確認する情報

選挙

首長・議会それぞれの選挙予定と結果

政策

公約、所信・施政方針、重点施策

計画

総合計画・分野別計画の内容と改定予定

予算

予算要求の時期、当初・補正予算、関連事業

体制

担当部署、事務分掌、組織改編

実施

実証条件、契約更新、公募・選定予定

次の行動

確認したい事項、提供資料、連絡時期

各情報には出典と確認日を付け、「公表された事実」と「営業上の仮説」を分けます。公約に記載された段階と、予算が成立した段階を同じ受注見込みとして扱わないことも重要です。

よくある質問

選挙前と選挙後ではどちらが営業に向いていますか

目的によります。選挙前は課題把握や政策の選択肢の提供、選挙後は方針に沿った事業条件の具体化に向いています。実際の提案期限は、予算編成や公募の予定と合わせて判断します。

首長や議員と面談できれば導入は進みますか

面談は政策への理解を得る入口です。導入には、担当部署の検討、財源、実施体制、必要な手続が伴います。面談後に何を確認し、誰が検討を担うかまで整理しましょう。

公約に自社の事業分野が入っていない場合は提案できませんか

公約は自治体の事業全体を網羅するものではありません。既存計画や事業評価、担当部署の課題、予算資料から提案余地を確認できます。

連携協定を結べば受注につながりますか

協定の締結と個別の事業・契約は別です。協定に基づく活動内容、役割、費用、評価、継続判断を具体化し、調達が必要な場合はその手続を確認します。

選挙と政策の変化を次の提案につなげる

自治体営業では、選挙、公約、計画、予算、議会での議論をつなげて読むことで、「どこに」「何を」「いつ」提案するかを考えやすくなります。政治と行政それぞれの役割を理解し、住民への価値と実施可能性を示すことが、官民連携の土台になります。

LobbyAIは、公共情報AIデータベースと、政治・行政の実務知見を生かした政策渉外・官民連携の実行支援を通じて、企業の公共領域への事業展開を支えます。

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髙橋京太郎

LobbyAI株式会社 代表取締役CEO

日本大学法学部卒業、法政大学大学院修了。衆議院議員秘書、さいたま市議会政務活動員として、国政・地方行政の現場で政策形成や渉外業務に従事。大学在学中から国政政党の学生組織の設立・運営に携わり、超党派団体での活動を通じて若年層の政治意識向上にも取り組む。一方で、WEBサービスの開発・運営にも携わり、マッチングアプリのコンテンツディレクターなどを務めるなど、テクノロジー分野での実務経験も積む。アジアを代表する30歳未満の先進的な起業家・リーダーを選出する「Forbes 30 Under 30 Asia 2026」に選出。東京都・TIBのスターティングメンバーにも参画。

どの自治体が、
どんな課題に動いているか

全国1,700以上の自治体の議会発言、入札情報、計画資料などをAIで自動解析し、「いま、どの自治体が、どんな課題に関心を持ち、どこで提案のチャンスが生まれているのか」を可視化。

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