第2次高市改造内閣を読む|維新入閣の影響は?顔ぶれより「担務の再設計」から政策の次を読む

ロビー活動

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2026/09/22

AIからAXへ、復興・防災、地域未来戦略。新政権の政策優先順位をどう見るか

2026年9月の第2次高市改造内閣は、主要閣僚の留任や日本維新の会の初入閣が注目されました。しかし、政策の方向性を読むうえで重要なのは、閣僚の顔ぶれだけではありません。AI担当、AX社会実装担当、男女共同参画、復興・防災、地域未来戦略、そして維新の閣内入りとライドシェアをめぐる規制改革など、各大臣・首相補佐官・副大臣・政務官に付与された「担務」の再設計から、高市政権の政策推進と企業が追うべきポイントを分析します。

https://www.kantei.go.jp/jp/105/meibo/index.html

はじめに:人事表ではなく、担務表を見る

高市早苗首相は2026年9月17日、政権発足後初めてとなる内閣改造を行いました。片山さつき財務大臣、茂木敏充外務大臣、小泉進次郎防衛大臣など主要閣僚の多くは留任し、全体としては大幅な刷新よりも、政権運営の継続性を重視した布陣です。

また、日本維新の会から中司宏氏が規制改革・行政改革担当の内閣府特命担当大臣として入閣しました。自民・維新連立政権は、これまでの「閣外協力」から、維新が閣僚を出す「閣内協力」へと段階を進めたことになります。

一方で、今回の改造をポスト配分や党内バランスだけで見ると、政策運営上の変化を見落とす可能性があります。

注目すべきは、誰が大臣になったかだけではありません。各大臣にどの政策領域を担当させ、どの省庁・首相補佐官・副大臣・大臣政務官に、どの機能を配置したのか。つまり、「担務の再設計」です。

担務とは、大臣や役所が担当する政策分野・業務を指します。担務の付け替えは、単なる肩書きの変更ではありません。政策の司令塔、予算要求、制度設計、規制改革、補助金、行政執行の経路を変える可能性があります。

ただし、担務の付与だけで、直ちに予算や権限の移管、制度変更が決まるわけではありません。本稿では、次の三つを分けて見ていきます。

  1. 人事・担務から直接確認できる事実

  2. そこから合理的に読み取れる政策上の含意

  3. 今後、予算・制度・現場実装によって検証すべきポイント

今回の人事は、人事表ではなく担務表から読むべき内閣改造です。

今回の担務変更を先に整理する

政策領域

今回の担務

現時点での読み方

今後確認すべきアウトプット

維新の閣内入り

規制改革・行政改革担当大臣、副大臣2人、政務官3人

改革要求から利害調整・制度実装へ

規制改革、所管省庁との調整、制度改正、実績

AI・AX

古川デジタル大臣のAI担当、赤澤経済産業大臣のAX社会実装担当

政府全体のAI政策と、産業・行政現場への導入を分化

基本計画、予算、実証、企業支援、制度見直し

男女共同参画

法務大臣の担務に付与

理念・調整だけでなく、法制度や権利保障との接続を強める可能性

法改正、相談・救済、経済参画指標、自治体施策

復興・防災

細野復興大臣を軸に政策上の接続を強化

法的統合というより、復興・原子力災害・防災の調整責任を集約する可能性

予算、廃炉・地域再生、防災計画、インフラ・危機管理投資

地域未来戦略

藤井総務大臣、佐々木紀首相補佐官を配置

地域政策を補助金だけでなく、規制・制度・提案調整と接続

交付金、規制改革、特区、自治体計画、地域調達

1. 維新の閣内入り——「改革を求める側」から「利害調整を担う側」へ

今回の改造で、担務の変更と同じくらい重要なのが、日本維新の会の閣内入りです。

自民・維新連立政権では、これまで維新は閣僚を出さない「閣外協力」にとどまっていました。今回、維新の中司宏幹事長が規制改革・行政改革担当の内閣府特命担当大臣として入閣し、さらに副大臣2人、大臣政務官3人を含む計6ポストを得たことで、維新は政権の外から改革を求める立場から、政府内部で制度を動かす立場へ移りました。

この変化は、ライドシェアをめぐる政策過程において特に鮮明になります。

ライドシェアは、維新の「改革の実装力」が問われるテーマ

維新は大阪・関西万博を一つの契機として、規制改革を求める経済界や有力事業家からの後押しも受けながら、ライドシェアの大幅な規制緩和を推進してきました。

しかし、実際の制度設計では、タクシー事業者の安全管理、運行責任、ドライバーの確保、既存業界との調整などが論点となり、改革を一気に進めることは容易ではありませんでした。

現在の日本版ライドシェアは、タクシー事業者の管理の下で、地域の自家用車・一般ドライバーを活用する仕組みです。タクシー配車アプリのデータなどを用いて、営業区域ごとの不足する時期・時間帯・車両数を特定し、一定の許可を得て運行します。つまり、現行制度は全面的な自由化というより、タクシー事業者を制度の中心に置きながら、供給不足を補う折衷型の仕組みです。

大阪について、現時点で直接確認できるのは、国の日本版ライドシェアの導入区域として「大阪市域交通圏」が示されていることです。これをもって、大阪府全域で導入されたこと、大阪府・大阪市が運行を開始したこと、維新が行政実装を主導したこと、利用実績や政策効果が確認されたことまでを、一続きの事実として評価することはできません。

また、「日本版ライドシェア」と、交通空白地域の日常移動を支える「公共ライドシェア」は、制度の目的と実施主体が異なります。前者はタクシー事業者の管理下で、タクシーが不足する地域・時間帯を補完する制度です。後者は、市町村やNPO等が登録を受け、バスなどの公共交通が困難な地域の移動手段を確保する制度です。大阪でどの課題を解決するのかによって、選ぶべき制度も変わります。

ここに、維新の閣内入りの意味があります。

万博で明らかになった「実装の壁」

大阪・関西万博は、海外で一般的な24時間型のライドシェアが、日本の都市部でも定着するのかを試す象徴的な機会でした。維新や規制改革を求める経済界にとっても、制度緩和を実際の移動サービスへ転換できるかを示す場でした。

しかし、万博を通じて、海外型ライドシェアが大規模かつ持続的なサービスとして定着したとは言いにくい状況になりました。一部報道では、大阪万博でのライドシェアが「不発」に終わった、あるいは事業者がライドシェアから撤退したといった評価も示されています。

もっとも、事業者のその後の動きを「単純な撤退」とだけ捉えるのも正確ではありません。報道や同社の発表を見ると、事業者は万博前後に蓄積したドライバー調達力、タクシー事業基盤、運行管理の知見を、自動運転タクシーや走行データ収集へ振り向ける方向に動いています。大阪市、グループのタクシー会社との連携や、駅と自動運転タクシーの結節を見据えた実証は、その転換を示す動きです。

ここから読み取れるのは、「ライドシェアが失敗した」という単純な結論よりも、制度を緩和しても、それだけで移動サービスが成立するわけではないという事実です。大規模イベントという明確な需要があり、資本・技術・事業基盤を持つ企業が参入しても、供給の確保、ドライバーの採用・稼働、配車オペレーション、安全管理、既存タクシーとの接続、需要の時間変動、採算性が同時に問われます。

つまり、ライドシェアの実装の壁は、規制の壁だけではありません。規制を変えた後に、誰が運行を担い、どの地域・時間帯に、どの程度の供給を、どの安全基準と責任分担で提供し、持続的な事業として成立させるのかという、制度・現場・事業モデルの複合的な壁です。

これまでは、政府に対して「もっと規制を緩和すべきだ」と改革を求める側でした。しかし、閣内に入ったことで、今度は自らが複数の利害を調整し、制度として実行可能な解をつくる側になります。

ライドシェアをめぐっては、少なくとも次の関係者の利害を同時に扱わなければなりません。

  • 利便性向上や新規参入を求める利用者・自治体

  • 規制改革を求める経済界、プラットフォーム事業者、有力事業家

  • 既存のタクシー事業者とドライバー

  • 事故時の責任、安全管理、運賃、労務を所管する行政

  • 地域交通の維持と持続可能性を求める地方部の住民

維新が本当に制度を動かすには、「全面解禁か、現状維持か」という二択では足りません。どの地域・時間帯で不足が生じているのか、誰が運行管理を担うのか、事故やトラブルの責任を誰が負うのか、タクシー業界の事業継続性をどう確保するのかを具体的に設計する必要があります。

改革政党が「調整政党」になれるか

維新にとって、閣内入りは政策実現の機会であると同時に、これまで以上に厳しい説明責任を負うことを意味します。

改革を求める経済界から見れば、閣内に入った以上、規制改革を実際に進めてほしいという期待が高まります。一方、タクシー業界から見れば、安全や雇用、既存投資、地域交通の維持を無視した制度変更は受け入れにくいでしょう。

その間でどこまで改革を進め、どこに安全・責任・持続可能性の条件を置くのか。ここに、維新が「改革を主張する政党」から「利害を調整し、制度を実装する政党」へ変わることができるかという試金石があります。

LobbyAIの観点では、今後追うべきなのは、維新議員の発言だけではありません。国土交通省の制度改正、規制改革会議の論点、タクシー不足車両数の設定、自治体からの申出、許可事業者の拡大、運行管理や運賃の見直しまでを一つの政策ストーリーとして追う必要があります。

維新の閣内入りによって、ライドシェアは単なる交通政策ではなく、連立政権における規制改革の実装力と、既存産業との利害調整能力を測るテーマになりました。

2. AI担当とAX社会実装担当——「政策全体」と「現場導入」の分化

最も象徴的な変更の一つが、AI政策とAX社会実装の役割分担です。

古川俊治デジタル大臣がAI政策を担う一方、赤澤亮正経済産業大臣には「AX社会実装担当」が付されました。

ここで重要なのは、AXをAIと同義に扱わないことです。ここでは、AXを「AIなどのデジタル技術を企業・行政・社会の業務や仕組みに組み込み、変革を実装する政策領域」という分析上のラベルとして扱います。

一方、令和7年12月23日に閣議決定された人工知能基本計画の概要では、政府・自治体におけるAI利活用、自治体の導入環境、中小企業のAI導入支援、AI利活用を前提とした規制・制度の見直し、省庁間連携、ベンチマークとモニタリング、技術評価・リスク把握などが一体的な課題として整理されています。

つまり、AI担当は個別の導入支援だけでなく、政府全体の利用方針、制度、安全性、行政利用、評価の仕組みを扱う政策レイヤーとして位置付けられます。

それに対して、経済産業省側のAX社会実装担当は、企業や産業、自治体の現場において、導入、実証、普及、事業化を進める責任線として読むことができます。

この二つのラインが並置されたことで、AI政策はデジタル庁だけの政策ではなくなりました。政府全体のAIルール・利用環境と、産業・企業側の導入・実装を分けて設計し、両者を接続する体制が示されたと考えられます。

AI政策は「導入したか」ではなく「業務がどう変わったか」で評価される

AIの社会実装を考える際、単にAIを導入したかどうかだけでは不十分です。例えば、福岡市営地下鉄の資料では、駅の防犯カメラに搭載したAIが転倒や不審行動を検知し、警報を出した後、駅務員が現場で対応する運用が示されています。

ここでAIは駅務員を置き換えるのではなく、検知と警報によって駅員の防犯対応を補完しています。社会実装の成果は、AIの導入そのものではなく、検知、警報、現場対応という業務フローがどのように変わったかにあります。

今後、注目すべき政策アウトプットは次の通りです。

  • AIを活用した業務・製造・研究開発の変革

  • 中小企業のAI導入、データ連携、計算資源への支援

  • AI・半導体・サイバーセキュリティを含む経済安全保障政策

  • AIを前提とした規制・制度の見直し

  • 行政、医療、教育、金融、物流など公共性の高い領域での実証

  • AI導入後の生産性、品質、安全性、住民サービスの変化を測る指標

したがって、「経産省を中心にAXを展開する」という見方は、AI政策全体を経済産業省へ移すという意味ではありません。産業・企業側の導入、実証、普及に責任線を置くという範囲で理解するのが適切です。

3. 男女共同参画を法務大臣の担務に——担当付与から施策接続へ

男女共同参画を法務大臣の担務としたことも、今回の改造における重要な変更です。

男女共同参画政策は、これまで政府全体の調整、啓発、社会参加の促進という文脈で語られることが多い政策領域でした。これを法務行政と接続することで、権利保障、法制度、救済、相談支援などとの距離が近くなる可能性があります。

もっとも、法務大臣への担務付与だけから、具体的な法改正や制度変更を断定することはできません。政策課題の一つは、女性の経済参画です。近年、地方議会でも、女性の起業、女性に焦点を当てた情報発信、女性から選ばれる地域づくりなどが論点となっています。

したがって、今回の変更は「男女共同参画を法務省に移管した」と理解するよりも、男女共同参画を法制度・権利・救済・経済参画など複数の政策手段へ接続しやすくする配置と見るべきです。

今後は、法務省、内閣府、厚生労働省、文部科学省などの間で、どの政策課題がどのように整理されるのかを追う必要があります。特に確認すべきなのは、以下のような具体的アウトプットです。

  • 法律・制度の見直し

  • 相談・支援・救済体制の拡充

  • 女性の起業・就業・経営参画に関する施策

  • 自治体への事業支援や指標設定

  • 施策の効果を測るデータの公開

担務の変更が意味を持つのは、政策課題が予算、制度、実施主体、評価指標へ落ちたときです。

4. 復興・防災・福島原発事故対応——「一本化」ではなく調整責任の集約

細野豪志復興大臣のもとで、復興・福島原発事故対応と防災政策の接続を強める布陣が示されたことも注目されます。

ただし、現時点で「復興と防災が法的・組織的に一本化された」とまで断定するのは適切ではありません。行政上、復興、原子力災害対応、防災、国土強靱化、エネルギー、自治体危機管理は、それぞれ異なる制度、予算、関係省庁、実施主体を持っています。

今回の担務変更は、それらを一つの役所に統合したというより、相互に関係する政策線の調整責任を集約し、官邸・関係省庁・地域現場をつなぎやすくする配置として読むのが妥当です。

細野氏は、東日本大震災・福島第一原発事故の発生時に首相補佐官を務め、その後も福島原発事故への対応に携わってきました。危機発生時の政策判断や関係省庁間の調整を経験した政治家を、復興政策の中心に配置した意味は小さくありません。

福島の復興は、一般的な防災政策とは異なる固有の政策領域でもあります。廃炉・汚染水対策、原子力災害対応、地域の再生、産業基盤の再構築、研究開発拠点の整備、企業誘致などを組み合わせる必要があります。

過去の福島関連政策でも、廃炉・汚染水対策への国の関与だけでなく、地域づくり、予算措置、税制、規制緩和を組み合わせる方向が示されてきました。これは、復興が単なる被災地支援ではなく、産業構造の転換や地域経済の再構築を含む政策であることを示しています。

一方、防災側では、豪雪地帯対策のように、複数大臣への諮問、基本計画の変更、道路交通の確保、除排雪の担い手、空き家対策、雪冷熱エネルギーなど、地域ごとに異なる制度・実施体制が必要になります。

このため、今後は「復興と防災が一つになったか」ではなく、複数の政策線がどのように調整され、予算・制度・地域事業へ落とし込まれるかを見る必要があります。

企業が注視すべき領域は、次の通りです。

  • 防災・減災、国土強靱化、インフラ更新

  • 原子力災害、廃炉、エネルギー安全保障

  • 自治体の危機管理、避難、情報連携

  • 防災DX、衛星、通信、ドローン、データ活用

  • 被災地の産業再生、研究開発拠点、企業誘致

  • 地域の雇用・交通・住宅・医療を含む復興政策

復興、防災、エネルギー、デジタル、地域政策を別々に追うのではなく、「危機管理投資」と「地域再生」の接点として追うことが重要になります。

5. 総務大臣と地域未来戦略——補助金・規制・地域提案を束ねる仕組み

藤井比早之総務大臣が「地域未来戦略」を兼務し、地域未来戦略担当の首相補佐官として佐々木紀前国土交通副大臣が配置されたことも、実務面で注目されます。

総務省は、地方自治、地方財政、消防、情報通信、行政DXなど、自治体の政策実行に直結する機能を幅広く所管しています。地域未来戦略が総務行政と接続されることで、地域政策は理念やビジョンだけでなく、自治体への財政支援、制度設計、デジタル化、地域間競争と結びつきやすくなります。

ただし、地域未来戦略が単純に「補助金を配る政策」になると決まったわけではありません。過去の国家戦略特区の仕組みを見ると、地方創生と規制改革を一体的に担当し、自治体・事業者からの提案を受け、規制担当官庁との折衝を行い、特区での成果を全国展開につなげる設計が取られていました。

平成28年時点の資料では、36の規制改革メニューを活用し、認定事業数が合計200を超える見込みとされるなど、地域政策を予算だけでなく、規制改革、提案受付、実証、全国展開と組み合わせる考え方が示されています。これは現在の地域未来戦略を直接説明するものではありませんが、地域政策を推進する際の比較材料になります。

佐々木氏は、地域の要望や政策調整に通じた政治家です。首相補佐官として配置されたことで、地域の現場から上がる提案や要望を、政権の成長戦略、予算、制度に接続する役割が期待されます。

この体制からは、地域政策を一律の地方創生施策として進めるのではなく、地域ごとの産業、人口、インフラ、観光、交通、行政課題に応じて、重点的に資源を配分する方向性が見えます。

自治体や地域企業が注視すべきなのは、次のような政策です。

  • 地域ごとの重点交付金・補助金

  • 自治体DX、行政データ連携、地域交通

  • 観光・地域産業・スタートアップ支援

  • 防災・インフラ更新と地域経済の一体化

  • 特区、規制改革、実証事業

  • 地域計画や自治体調達への具体化

地域未来戦略は、自治体向け補助金を探すだけのテーマではありません。政権がどの地域課題を成長機会とみなし、どの産業・自治体・企業に政策資源を配分するのかを読むための政策レンズです。

6. 副大臣・政務官の兼務に見る「横断型の実行体制」

担務の変化は、大臣だけに表れているわけではありません。副大臣・大臣政務官人事を見ると、内閣府との兼務が複数の省庁に配置されています。

大臣政務官では、赤松健氏がデジタル・内閣府、福原淳嗣氏が総務・内閣府、阿部弘樹氏が法務・内閣府、山口晋氏が財務・内閣府、若山慎司氏が経済産業・内閣府、石原正敬氏が環境・内閣府、坂本竜太郎氏が復興・内閣府、上杉謙太郎氏が防衛・内閣府を兼務する体制となっています。

こうした兼務は、すべての政策が同じ強度で横断化されることを意味するわけではありません。しかし、政権の重点政策を省庁単位で完結させず、内閣府・官邸を介した複数省庁の政策群として動かそうとしていることを示すシグナルです。

政策を読み解く際には、大臣の発言だけでなく、次の層まで確認する必要があります。

  1. 総理・官房長官が示す政治メッセージ

  2. 大臣に付与された特命・兼務担務

  3. 首相補佐官・内閣府の政策調整ライン

  4. 副大臣・政務官の配置と省庁横断の兼務

  5. 予算、審議会、規制改正、補助金、調達への具体化

今回の人事は、政策テーマを掲げるだけでなく、それを実行ラインに落とし込むための配置まで意識された人事と見ることができます。

7. 政策は「方針」から「アウトプット」へ変わる

政策の進行段階で整理すると、政策は次のような複数の層を持っています。

政策方針・担務の付与
        ↓
官邸・内閣府での政策調整
        ↓
省庁の制度設計・予算要求
        ↓
審議会・有識者会議・パブリックコメント
        ↓
補助金・規制改正・調達・自治体施策
        ↓
企業・地域での実証と社会実装
        ↓
住民・企業・地域産業の変化

例えば、AI・AXでは、政府の基本計画、企業向け導入支援、自治体サービスの運用が同じ政策線上に並びます。男女共同参画では、担務付与から、経済参画、起業、相談・支援、制度設計へ接続するかが焦点になります。

復興・防災では、復興政策と防災計画が同一制度になることよりも、廃炉、地域産業、防災インフラ、自治体危機管理をどのように調整するかが重要です。地域未来戦略では、予算、規制改革、地域提案、自治体計画がどのように一つの実装経路になるかが問われます。

したがって、政策分析においては「政策が発表されたか」だけでなく、次のアウトプットを追う必要があります。

  • 予算要求・予算成立

  • 法案・政省令・ガイドライン

  • 審議会・検討会の設置と論点

  • 補助金・交付金・公募

  • 規制改革・特区・実証事業

  • 入札・調達・自治体計画

  • KPI、評価指標、現場での導入結果

8. 企業・自治体が見るべきは「担当者」ではなく「政策の経路」

政策・行政情報を事業機会につなげる上で、今回の改造から得られる実務的な示唆は大きいです。

これまでの政策ウォッチでは、担当大臣の交代や記者会見、法案提出が主な観測対象になりがちでした。しかし、政策が事業や予算に変わるまでには、複数の段階があります。

例えばAX社会実装を追う場合、デジタル担当大臣の発言だけでは不十分です。経済産業省の予算、AI・半導体・サイバーセキュリティ政策、企業支援策、規制改革、実証事業、自治体や大企業への導入事例まで追う必要があります。

地域未来戦略についても、総務省の交付金情報だけでなく、首相補佐官の発言、各省庁の地域関連施策、自治体の公募、国土交通・経済産業・デジタル分野との連携まで確認しなければ、政策の本流を捉えにくくなります。

重要なのは、「誰が担当者か」だけではありません。

誰が、どの政策テーマを、どの省庁と、どの予算・制度・執行手段につなごうとしているのか。その政策経路を把握することが、公共ビジネスの機会発見や政策提案のタイミングを左右します。

9. LobbyAIの視点——人事情報を政策インテリジェンスに変える

LobbyAIは、行政・政治の公開情報を横断的に収集・解析し、企業が政策変化を事業機会や経営アクションにつなげるための政策インテリジェンス基盤です。

内閣改造を例にとれば、単に「誰が大臣になったか」を一覧化するだけでは十分ではありません。

  • 新たに付与された担務は何か

  • どの省庁・内閣府と接続しているか

  • どの首相補佐官・副大臣・政務官が実行ラインに入ったか

  • 過去の発言や政策実績は何か

  • 予算・法案・補助金・調達にどう展開し得るか

  • 企業にとって、どのタイミングで提案・連携・実証を行うべきか

こうした問いに対して、役職情報、国会発言、閣議決定、予算資料、審議会、パブリックコメント、自治体公募などをつなぎ合わせて分析する必要があります。

LobbyAIが目指すのは、政策情報を集めて終わることではありません。政策・行政情報をインテリジェンスへ変換し、「どこに、何を、いつ提案するか」という勝つための意思決定につなげることです。

今回の改造は、政策の司令塔がどこに置かれ、どの分野に政策資源が集まり、誰が社会実装を担うのかを見極めるための重要な観測機会です。

まとめ:高市政権の次の焦点は「担務」が何に変わるか

第2次高市改造内閣の本質は、閣僚の入れ替えそのものではありません。

AI担当のデジタル大臣と、AX社会実装担当の経済産業大臣。法務行政と接続された男女共同参画。復興、原子力災害対応、防災をめぐる調整責任の集約。総務省と首相補佐官を軸にした地域未来戦略。そして、内閣府との兼務を組み込んだ副大臣・政務官の実行ラインです。

さらに、維新の閣内入りによって、規制改革を掲げる政党が、経済界や利用者の期待と既存業界の安全・持続可能性をどのように調整するのかも、政権運営の重要な観測点になりました。万博におけるnewmoの展開が、海外型ライドシェアの定着という意味では不発・不調と評価され得る一方、自動運転や走行データ活用へ事業基盤を転換している点は、規制緩和だけでは解けない実装上の壁を示しています。

これらを総合すると、高市政権は、

  • AIを産業・社会の変革につなげる

  • 政策全体の設計と現場導入を分けて実装する

  • 危機管理、復興、地域再生を投資・産業政策と接続する

  • 地域への資源配分を、補助金だけでなく規制・制度・提案調整と組み合わせる

  • 規制改革を政権内の利害調整と制度実装へ移行させる

  • 省庁縦割りを越えて、官邸・内閣府を軸に政策を実装する

という方向に、政策運営の重心を置こうとしているように見えます。

ただし、これは現時点での政策シグナルの分析です。実際の政策効果は、予算、制度、実施主体、現場で確認できるアウトプットによって検証されなければなりません。

今後の政策分析で重要なのは、ニュースの見出しに出る人事だけではありません。担務の変更、兼務の配置、予算、制度、補助金、規制改革、調達、自治体の動きを連続的に追うことです。

人事表ではなく、担務表を見る。

そこから政策の優先順位と、次に動く市場を読み解くことができます。

髙橋京太郎

LobbyAI株式会社 代表取締役CEO

日本大学法学部卒業、法政大学大学院修了。衆議院議員秘書、さいたま市議会政務活動員として、国政・地方行政の現場で政策形成や渉外業務に従事。大学在学中から国政政党の学生組織の設立・運営に携わり、超党派団体での活動を通じて若年層の政治意識向上にも取り組む。一方で、WEBサービスの開発・運営にも携わり、マッチングアプリのコンテンツディレクターなどを務めるなど、テクノロジー分野での実務経験も積む。アジアを代表する30歳未満の先進的な起業家・リーダーを選出する「Forbes 30 Under 30 Asia 2026」に選出。東京都・TIBのスターティングメンバーにも参画。

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