高市政権のデジタル・サイバーセキュリティ戦略とは?国内55.4兆円市場を『危機管理投資・成長投資』から徹底解説

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2026/09/19

高市政権のデジタル政策で押さえるべき3つのポイント

高市政権の「危機管理投資・成長投資」におけるデジタル・サイバーセキュリティ政策は、単なる行政DXやIT予算の拡大として捉えるだけでは十分ではありません。

ポイントは次の3つです。

  1. デジタル・サイバーセキュリティは17の戦略分野の一つとして位置付けられ、6つの主要製品・技術について想定される官民投資額を単純合計すると55.4兆円に上る。

  2. 政府・自治体などの公共部門が、自ら利用者となり、調達・標準化・共通基盤・規制改革を通じて民間市場を形成する政策構造が強まっている。

  3. 今後企業にとって重要なのは補助金額だけではなく、「制度→予算→標準→実証→調達→全国展開」という政策形成プロセスを早期に把握することである。

政府は2026年7月21日に「日本成長戦略」を閣議決定し、17の戦略分野、62の主要な製品・技術等について官民投資ロードマップを策定しました。高市首相は、2040年までに期待される官民投資が全分野で370兆円を超えるとの見通しを示しています。

さらに9月17日に閣議決定された政府基本方針でも、17の戦略分野を中心に官民連携による「危機管理投資」「成長投資」を推進する方針が改めて明記されました。

その中でもデジタル・サイバーセキュリティは、行政、医療、データ、クラウド、重要インフラ、モビリティなど、日本社会の基盤そのものに関係する分野です。

高市政権の「危機管理投資・成長投資」とは

高市政権が掲げる成長政策の特徴の一つが、経済安全保障や社会課題への備えと、産業成長を同じ政策の中で捉えていることです。

「危機管理投資」は、サイバー攻撃、災害、医療・行政システムの停止、エネルギーや通信基盤の途絶といったリスクに対し、問題が顕在化する前から投資する考え方です。

一方の「成長投資」は、そうした社会課題を解決する技術や製品、インフラへの投資を国内産業の成長につなげる考え方です。

デジタル・サイバーセキュリティについて、サイバー攻撃や行政・医療基盤の停止、通信・計算基盤の脆弱性に対する先行投資と、そこで生まれる製品・サービス、人材、研究開発への需要を一体的に捉える必要があります。

例えば、病院がランサムウェアによって停止するリスクを低減する投資は「危機管理」です。

しかし、そのために国産サイバーセキュリティ製品、SOC、クラウド、データバックアップ、人材育成への需要が拡大すれば、それは国内企業にとって「成長市場」になります。

この「社会の脆弱性を減らす投資」と「新市場を作る投資」を重ね合わせることが、今回の政策を理解する重要なポイントです。

https://lobbyai.co.jp/blog/takaichiseiken-17bunya

デジタル・サイバーセキュリティは6領域、官民投資額は単純合計55.4兆円

政府の官民投資ロードマップでは、デジタル・サイバーセキュリティ分野に六つの主要な製品・技術等が設定されています。

主要領域

想定される官民投資額

データプラットフォーム

2035年度までに0.9兆円

セキュリティの確保された政府・地方公共団体のAX/DX基盤

2035年度までに7.4兆円

AI時代に対応した先進的セキュリティ製品・サービス

2035年度までに1.0兆円

クラウド・データセンター、蓄電池

2035年度までに32.7兆円

クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤

2040年度までに5.2兆円

自動運転技術

2040年度までに8.2兆円

政府資料に記載された金額を単純合計すると55.4兆円です。

ただし注意が必要です。

55.4兆円は「政府が55.4兆円を支出する」という意味ではありません。

政府投資だけでなく民間設備投資などを含む「官民投資額」の想定であり、さらに2035年度までの項目と2040年度までの項目が混在しています。

したがって、同じ期間を対象とした厳密な「市場規模55.4兆円」と解釈するよりも、政府が今後10~15年程度で大規模な投資誘発を狙う政策領域として捉えるのが適切です。

最大の変化は「公共部門が市場を作る」こと

今回の政策で企業側から特に注目すべきなのが、政府や自治体の役割です。

従来の産業政策では、政府が研究開発補助金や実証補助金を提供し、その後の事業化は企業側に委ねられるケースも少なくありませんでした。

今回重視されているのは、それだけではありません。

政府機関や自治体自身が最初のユーザーとなり、政府調達によって初期需要を作る。共通仕様を設定する。自治体間でシステムを共同利用する。制度・規制を変更する。実証フィールドを提供する。

こうした政策手段を組み合わせ、民間企業が継続的に投資できる市場環境そのものを作る方向性です。

さらに高市首相は7月21日の日本成長戦略会議で、通常歳出とは別に「『強く豊かな日本』投資枠」を創設し、民間の予見可能性を高めるため複数年度計画を基本とする方針を説明しています。

これは企業にとって重要な変化です。

単年度の「補助金公募を探す」だけではなく、3年後、5年後に政府が何を買うのか、どの仕様を標準にするのか、どの分野へ継続予算を投入するのかを見る必要性が高まります。

データプラットフォーム:AI時代の競争力は「データを使える状態にできるか」

第一の領域が、データプラットフォームです。

生成AIやフィジカルAIの普及によって、企業や行政が保有するデータそのものの重要性が高まっています。

政府資料では、今後AIの学習に利用できる公開テキストデータの不足が課題になる中、日本が製造業をはじめ豊富な産業データを保有していることを強みとして指摘しています。

そこで重視されているのが、データをAIで利用しやすい状態にする「AI-Ready化」と、企業・組織を越えてデータを連携する「データスペース」です。

公共分野でも同様の構造が進んでいます。

大阪府の広域データ連携基盤「ORDEN」の事例では、自治体ごとに基盤を個別構築するのではなく、複数自治体による共同利用によってデータ接続、運用、サービス開発への継続需要を作る可能性を指摘しています。

今後は「システムを1自治体に納品する」だけでなく、複数自治体や複数企業が接続する共通データ基盤をいかに構築するかが大きなテーマになります。

政府・自治体AX/DX:7.4兆円の公共デジタル基盤市場

第二の領域は「セキュリティの確保された政府・地方公共団体のAX/DX基盤」です。

政府のロードマップでは、行政運営や国民生活を支える端末、ネットワーク、クラウド、AI基盤、基幹情報システム、データ連携、認証などを対象としています。

政府は2031年度までに、セキュアな政府業務基盤「GSS」のユーザーを28万人まで拡大し、その後もさらに拡大する目標を示しています。

地方自治体についても、基幹業務システムの標準化とガバメントクラウドへの移行が続いています。

デジタル庁は2026年8月にもデータ要件・連携要件の標準仕様に関する更新を行っており、標準化は「移行して終わり」ではなく、運用最適化、仕様管理、コスト改善の段階へ進んでいます。

そして公共DXの対象は、住民情報システムだけではありません。

水道管の漏水検知への人工衛星・AI活用や、下水道管路調査へのドローン活用など行政DXは、庁内ITからインフラ保全・現場業務のDXへ広がっています。

GovTech企業だけでなく、SIer、クラウド、AI、衛星、ドローン、インフラ保守企業まで政策対象になり得る理由です。

サイバーセキュリティ:防御コストから「成長産業」へ

今回の政策で特に重要なのが、サイバーセキュリティです。

政府は2035年までに国内サイバーセキュリティ企業の売上高を現在の約0.9兆円から3兆円超へ、約3倍に拡大する目標を示しています。

政府が課題として挙げているのが、海外製セキュリティ製品・サービスへの依存です。

今後は国産製品の開発だけでなく、政府機関が先進的な国内製品・サービスを率先導入して「実績」を作ることや、OTセキュリティ、中小企業への導入支援、高度サイバー人材育成などが政策メニューとして示されています。

つまり、サイバーセキュリティを単なる企業の「守りのITコスト」としてではなく、国内産業政策・経済安全保障政策として育成する考え方です。

サイバーセキュリティはデジタル分野の一領域であるだけでなく、17戦略分野全体に関係する横断的課題として整理が必要です。

さらに2026年10月1日からは、サイバー対処能力強化法に基づく官民連携、基幹インフラ事業者によるインシデント報告や資産届出等が始まる予定です。重要インフラについても、政府は同日施行予定の統一基準を決定しています。

今後は、サイバーセキュリティ製品そのものに加えて、リスクアセスメント、SOC、脅威インテリジェンス、インシデント対応、演習、人材育成、サプライチェーン管理などにも公共・民間双方の需要が広がる可能性があります。

クラウド・データセンター:32.7兆円と最大の投資領域

6領域の中で最大の官民投資額が想定されているのが、「クラウド・データセンター、蓄電池」です。

2035年度までの官民投資額は32.7兆円とされています。

生成AIやフィジカルAIが普及すれば、大量の計算能力が必要になります。

そのためデータセンター政策は、単なる不動産・建設政策ではありません。

電力供給、再生可能エネルギー、蓄電池、通信ネットワーク、クラウド、半導体、サイバーセキュリティ、災害時のバックアップ機能などが一体化した政策領域になります。

たとえば、大阪府が都市機能のバックアップという観点からデータセンターを含むデジタルインフラ整備を捉えているほか、北海道ではAIデータセンター、再生可能エネルギー、半導体、国際海底通信ケーブルなどの産業集積が議論されています。

今後、データセンター立地をめぐる競争では、土地の有無だけでなく、電力、通信、災害耐性、自治体支援、人材、関連産業の集積を含めた地域政策が重要になります。

医療DX:5.2兆円、「電子カルテのクラウド化」を超えた市場へ

医療DXも、今回の戦略における大きな市場です。

政府は「クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤」について、2040年度までに5.2兆円の官民投資を想定しています。

政府資料では、現在オンプレミス型が主流となっている医療機関の情報システムをクラウドネイティブ型へ刷新し、サイバーセキュリティ対策を強化するとともに、データ連携を創薬・医療機器研究などへつなげる方向性が示されています。

重要なのは、医療DXを「電子カルテをクラウドに置き換える政策」だけで捉えないことです。

医療データの標準化、病院内システムの連携、PHR、サイバーセキュリティ、医療機器、創薬、災害医療などが連続しています。

たとえば、災害派遣福祉チーム「DWAT」の登録・派遣を全国共通システム化する事業まで取り上げています。令和7年度補正予算案では1.7億円が計上され、実施主体や利用者まで具体化しています。

医療・介護・福祉のデジタル化は、個別病院向けシステム市場から、全国的な公共データ・業務基盤市場へ広がりつつあります。

自動運転:8.2兆円、「車」だけでなく制度とデータが市場になる

自動運転技術には2040年度までに8.2兆円の官民投資が想定されています。

政府は、日本が持つ自動車製造技術や多様な走行環境を活用しながら、AI、車両、通信インフラ、データ収集、事業モデルを一体的に整備する方向性を示しています。

同時に、自動運転は交通事故削減、地域交通の維持、物流の人手不足対応という社会課題とも結び付いています。

この領域でも重要なのは、技術開発だけではありません。

公共道路を利用する以上、安全基準、通信、データ共有、サイバーセキュリティ、事故時の責任、道路インフラ、自治体との連携が不可欠です。

現在、自動運転は、「自治体の導入台数を競う段階」というより、官公庁調達、規制改革、研究開発、国際標準化を官民投資ロードマップへ接続していく段階にあたります。

企業は「予算」だけではなく政策形成プロセスを見る必要がある

では、企業は今回の政策をどのように事業戦略へ落とし込めばよいのでしょうか。

最も重要なのは、「政府予算が付いた後」に情報収集を始めないことです。

政策市場では、多くの場合、実際の調達より前に重要な意思決定が行われます。

政策課題が政府審議会で議論され、業界団体や自治体から要望が出され、成長戦略や基本方針に盛り込まれる。そこから概算要求、予算、制度改正、ガイドライン、実証、公募、調達へと具体化していきます。

今後の焦点として、個別の実証・導入を「共通仕様」「継続的な調達」「複数年度予算」「成果管理」へ接続できるかが重要です。

高市首相も日本成長戦略について、17の戦略分野を単発支援ではなく複数年で進め、企業や自治体が予見可能性を持てる政策運営を進める考えを示しています。

企業側から見ると、

政策課題 → 審議会 → ロードマップ → 制度改正 → 予算 → 実証 → 標準化 → 公共調達 → 全国展開

という一連の流れを追跡する必要があります。

2026年秋以降、注目すべき政策動向

2026年9月現在、日本成長戦略そのものと官民投資ロードマップは既に決定されています。

したがって、これから重要になるのは「何をやるか」だけではなく、誰が、いつ、どの予算・制度を使って実装するのかです。

特に令和9年度予算編成、各省庁の個別事業、制度改正、調達仕様、標準化、自治体での実装へ、ロードマップがどのように接続するかが焦点になります。

サイバーセキュリティ分野では、10月1日に予定されているサイバー対処能力強化法に基づく官民連携の開始や、重要インフラ統一基準の施行も重要な節目です。

自治体DXについても、デジタル庁では基幹業務システムの標準化やガバメントクラウド移行後の運用最適化に向けた取組が2026年度も継続しています。

つまり、2026年後半から2027年度にかけては、「成長戦略」という上位政策が、具体的な予算・制度・調達市場へ変換される過程を観察する局面に入ります。

まとめ:デジタル政策は「公共部門を需要創出装置にする」段階へ

高市政権の危機管理投資・成長投資におけるデジタル・サイバーセキュリティ政策は、行政のデジタル化だけを意味するものではありません。

データプラットフォーム、政府・自治体AX/DX、サイバーセキュリティ、クラウド・データセンター、医療DX、自動運転という6領域について、政府資料上の想定官民投資額を単純合計すると55.4兆円になります。

そして政策構造として重要なのが、政府・自治体・医療機関などの公共部門です。

公共部門が新しい技術の利用者となり、需要を作る。共通仕様を作る。標準化する。規制を変更する。複数年度の政策を示す。

その結果、民間企業が投資しやすい市場を形成するという構造です。

既に自治体間のデータ基盤共同利用、行政・上下水道DX、病院・自治体のサイバー対策、医療・災害福祉システムなどは実装段階に入りつつある一方、データセンターや自動運転では、投資環境や制度をロードマップへ接続する段階にあると整理できます。

したがって、企業にとって問われるのは、単に「補助金はいくらあるのか」ではありません。

どの社会課題が政策アジェンダになり、どの省庁が所管し、誰が意思決定し、どの制度が変わり、いつ予算化され、どのような仕様で調達されるのか。

政策情報を事業戦略へつなげられる企業ほど、公共市場の形成前から事業機会を捉えやすくなります。

高市政権のデジタル・サイバーセキュリティ政策は、まさに「政策を知ること」と「市場を知ること」の境界がなくなりつつある領域だと言えるでしょう。

LobbyAIで政策変化を事業機会に変える

政策や規制の変化は、公布や予算成立の時点で突然始まるものではありません。

その前段階には、政府審議会、自治体議会、予算要求、業界団体からの要望、議員・行政による問題提起など、多数の政策シグナルがあります。

行政情報AI「Lobby AI」では、国会・省庁・自治体などに分散する公開情報を横断的に収集・分析し、自社事業に関連する政策・規制・予算・行政動向の把握を支援します。

高市政権の「危機管理投資・成長投資」のように、政策決定と新市場の形成が連動する領域では、政策が決まってから調べるのではなく、市場が生まれる前の政策変化を捉えることが事業開発の重要な情報基盤になります。

髙橋京太郎

LobbyAI株式会社 代表取締役CEO

日本大学法学部卒業、法政大学大学院修了。衆議院議員秘書、さいたま市議会政務活動員として、国政・地方行政の現場で政策形成や渉外業務に従事。大学在学中から国政政党の学生組織の設立・運営に携わり、超党派団体での活動を通じて若年層の政治意識向上にも取り組む。一方で、WEBサービスの開発・運営にも携わり、マッチングアプリのコンテンツディレクターなどを務めるなど、テクノロジー分野での実務経験も積む。アジアを代表する30歳未満の先進的な起業家・リーダーを選出する「Forbes 30 Under 30 Asia 2026」に選出。東京都・TIBのスターティングメンバーにも参画。

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全国1,700以上の自治体の議会発言、入札情報、計画資料などをAIで自動解析し、「いま、どの自治体が、どんな課題に関心を持ち、どこで提案のチャンスが生まれているのか」を可視化。

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