イベント

2026年9月26日、軽井沢で開催された「SWISH! Startup Camp 2026」にて、LobbyAIは「政治・行政を、事業の味方にするには ― 官民連携の本音を聞くセッション ―」を実施しました。
登壇したのは、株式会社ABABA 代表取締役社長の久保駿貴氏、株式会社フツパー 取締役副社長COOの黒瀬康太氏、LobbyAIからは、代表取締役社長の髙橋京太郎、渉外・公共ソリューション本部長の和田花織。
それぞれ異なる領域で事業を成長させてきた4名が、「政・官・民はなぜズレるのか」「ロビー活動とは実際に何をするものなのか」「これからの官民連携はどう変わるのか」をテーマに、スタートアップと政治・行政との向き合い方について議論しました。

スタートアップの成長戦略というと、プロダクト開発、採用、営業、マーケティング、資金調達などがまず思い浮かびます。
しかし、事業が社会に深く入り込んでいくほど、企業だけではコントロールできない領域が増えていきます。
規制や制度、行政計画、予算、補助事業、公共調達。そして、新しいサービスを既存制度の中でどのように位置づけるか。
特に、新しい産業や市場をつくろうとするスタートアップにとって、「政策」は決して事業の外側にあるものではありません。
今回のセッションで繰り返し浮かび上がったのも、政治や行政との関係を「何か問題が起きてから対応するもの」ではなく、事業を社会実装するための経営変数の一つとして捉える必要性でした。

官民連携を難しくしている要因の一つが、それぞれが見ているゴールや時間軸の違いです。
企業は、顧客価値や売上、事業成長を考えます。一方、行政には公平性、公益性、説明責任、予算、議会、制度との整合性など、企業とは異なる判断基準があります。
そのため、企業側が「このサービスは便利です」「市場が伸びています」と説明するだけでは、行政側の意思決定につながらないことがあります。
必要なのは、事業の言葉を政策の言葉へ翻訳することです。
企業にとっての事業課題が、行政にとってどの社会課題と接続するのか。その課題は既存の政策や計画の中でどのように位置づけられているのか。そして、誰が意思決定に関わっているのか。
官民連携では、相手を説得する前に、まず相手の意思決定構造を理解することが重要になります。
「ロビー活動」という言葉から、政治家や行政に何かをお願いする活動をイメージする人も少なくありません。
しかし、今回の議論から見えてきたのは、それだけでは捉えきれない実務の姿です。
新しい事業を社会に実装しようとすると、既存の制度では想定されていなかった課題が生まれることがあります。
そのとき企業に求められるのは、自社に都合の良い制度を求めることではなく、現場で何が起きているのかという情報を提供し、行政、政治、業界、企業など複数の関係者と課題認識を共有していくことです。
つまりロビー活動とは、単発の「陳情」ではなく、事業と社会課題を接続しながら、合意形成のプロセスをつくっていく活動でもあります。
重要なのは「誰と知り合うか」だけではありません。
誰がそのテーマを担当しているのか。
どの政策文書で議論されているのか。
予算はいつ決まるのか。
どの審議会や議会で議論されているのか。
意思決定が動くタイミングはいつなのか。
こうした政策形成の構造を理解したうえで動くことが、官民連携を事業成果へつなげるうえで重要になります。
行政との連携では、補助金や実証実験が最初の接点になるケースもあります。
ただし、採択されることや実証を実施すること自体が事業のゴールではありません。
実証の先に、本導入があるのか。
予算化される可能性があるのか。
他自治体や他地域へ横展開できるのか。
制度そのものに反映される可能性があるのか。
官民連携を一つのイベントとして捉えるのではなく、実証、評価、予算化、調達、制度化までを一つの流れとして見る必要があります。
スタートアップ側にも、「補助金を取る」「行政と実証する」から一歩進み、その先の社会実装まで設計する視点が求められます。
AI、モビリティ、エネルギー、医療、教育、人材、防災、製造業――。
社会課題と密接につながる産業では、事業と政策の境界線はますます曖昧になっています。
これからのスタートアップ経営では、市場や競合だけでなく、「政策がどちらに動こうとしているのか」を理解することの重要性が高まっていくと考えられます。
法律が変わってから知る。
予算が成立してから動く。
公募が出てから営業する。
それでは遅いケースもあります。
議会でどのような課題が語られているのか。行政計画に何が書き込まれたのか。審議会で何が検討され始めたのか。次年度予算に向けて、どのテーマが動いているのか。
政策形成の早い段階に存在する小さな変化を捉えられるかどうかが、その後の事業機会を左右します。
LobbyAIが取り組んでいるのも、この情報格差の解消です。
中央省庁や自治体には、議会議事録、行政計画、審議会資料、予算資料、入札・公募情報など、膨大な情報が公開されています。
しかし、それらは行政機関や文書ごとに分散しており、企業が継続的に収集し、「自社にとって何が重要なのか」を判断するには大きなコストがかかります。
LobbyAIでは、こうした公共情報をAIで収集・構造化・分析し、政策渉外、自治体営業、規制対応、官民連携などの意思決定につなげる仕組みを開発しています。
今回のセッションを通じても改めて見えてきたのは、官民の間にあるのは、単なる「人脈の差」だけではなく、「情報へのアクセス」と「意思決定構造への理解」の差でもあるということです。
政治や行政は、企業にとって遠い存在に見えるかもしれません。
しかし、社会を変える新しい事業ほど、既存の制度や政策との接点を避けて通ることはできません。
大切なのは、政治・行政を「規制する側」、企業を「規制される側」とだけ捉えないこと。

企業が持つ技術や現場の知見と、行政が持つ公共性や制度を組み合わせることで、一社だけでは実現できない社会実装が可能になります。
「政治・行政を、事業の味方にする」。
それは政治や行政を自社のために動かすという意味ではありません。
社会課題と事業をつなぎ、官と民がお互いの構造を理解したうえで、同じ課題の解決に向かって動ける関係をつくること。
今回のSWISH!での対話は、これからのスタートアップ経営における「政策」と「官民連携」の重要性を改めて考える機会となりました。
LobbyAIは今後も、「データアクセスに、非対称性がない世界へ」を掲げ、公共情報とAIを通じて、企業と政治・行政の間にある情報格差を解消し、新しい官民連携と社会実装を支援していきます。
イベント:SWISH! Startup Camp 2026
日時:2026年9月26日(土)
セッション:「政治・行政を、事業の味方にするには ― 官民連携の本音を聞くセッション ―」
登壇者
株式会社ABABA 代表取締役社長 久保 駿貴 氏
株式会社フツパー 取締役副社長COO 黒瀬 康太 氏
LobbyAI株式会社 代表取締役社長 髙橋京太郎
LobbyAI株式会社 渉外・公共ソリューション本部長 和田 花織
髙橋京太郎
LobbyAI株式会社 代表取締役CEO
日本大学法学部卒業、法政大学大学院修了。衆議院議員秘書、さいたま市議会政務活動員として、国政・地方行政の現場で政策形成や渉外業務に従事。大学在学中から国政政党の学生組織の設立・運営に携わり、超党派団体での活動を通じて若年層の政治意識向上にも取り組む。一方で、WEBサービスの開発・運営にも携わり、マッチングアプリのコンテンツディレクターなどを務めるなど、テクノロジー分野での実務経験も積む。アジアを代表する30歳未満の先進的な起業家・リーダーを選出する「Forbes 30 Under 30 Asia 2026」に選出。東京都・TIBのスターティングメンバーにも参画。
どの自治体が、
どんな課題に動いているか
全国1,700以上の自治体の議会発言、入札情報、計画資料などをAIで自動解析し、「いま、どの自治体が、どんな課題に関心を持ち、どこで提案のチャンスが生まれているのか」を可視化。
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